二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Band / GOTTA-NI. SPECIAL INTERVIEW 二階堂和美×ジェントル久保田(Gentle Forest Jazz Band) [インタビュアー:宮内健]

みんな9月に発売した二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Bandの
アルバム『GOTTA-NI』は聞いたかな??
最高のアルバムなので今年中にがっちり聞き込んでおくべき!
そんなわけで聞き込んだ方にはグッとくる、これから聞く方にはハッとくる、
二階堂和美とジェントル久保田によるアルバム全曲解説対談!ほかでは読めない深い話連発!
これを読めばアルバム「GOTTA-NI」の素晴らしさが、なお一層浸透しますよ!
そして今月23日からはじまるワンマンツアーにきたら、最高の流れです!
さぁお待ちしております。

── 二階堂和美とGentle Forest Jazz Bandの共演というのは本当に心躍る組み合わせで、このコラボが実現したことを嬉しく思っているリスナーはたくさんいると思うんですが、ニカさんがビッグバンドを従えて歌うというアイディアの原点はどこにあったんでしょう?

ホーンセクションを抱えて歌う、みたいなのは、二十歳前後に聞いてたソウルとかスカとかのほとんどがそんな音だったし、漠然とあこがれはずっと持ってました。でもビッグバンドの原点ってことで考えると、18歳で知ったエラ・フィッツジェラルドにある気はしますね。その『Ella In Berlin』ってアルバムはビッグバンドではなかったけど、ライブ盤だったので、スイング感がすごかった。 ジェントルを知ったのは、8年前、2004年の「はまけんジャズ祭」。そのときハマケンが歌い手として、ビッグバンドしょって、黒スーツでめかし込んで、歌って踊ってスキャットしてたのを見て、「えー、ちょっと最高なんだけど!!」って。指揮者がいるっていうこともだし、そのジェントル久保田のキャラクター含めて、これは!って思った。演奏直後に楽屋に押しかけて。今すぐにとは思ってなかったけど、そのうちにっていう現実的なアイデアとなったのはその時ですね。 その間、にじみバンドの経験はもちろん、ここ2,3年で、オーケストラや吹奏楽と共演させてもらう機会がいくつもあったりして、それぞれのやり方とか、個性みたいなのもわかってきて。じわじわ、なにかが満を持してきてた感じがあったところに、去年の夏、カクバリくん(注:レーベル社長)から「ニカさん、ワンマンやりましょう、場所は東京キネマ倶楽部押さえてます」って言われて、「それならジェントルとやりたい」って。

ニカさんとキネマの舞台は絶対にハマるだろうなとはわかってたんですけど、ニカさんがどんな風にステージ上で立ち振る舞うのかは、実際にやってみなければわからなかった。ビッグバンドって、9割方はしっかりと決めて、あとの1割でどう遊ぶかってぐらいで、全部ガチッと決めておかないと上手くいかないものなんです。それにリハーサルでは「歌とビッグバンド」という形としてはすごくよくても、そこからもう一段階何かが生まれるかどうかが肝でもあって。でも、実際にステージ上で一緒にやってみて、これは間違いないなって確信しましたね。

── 実際に一緒にステージに立って気付いたことってありますか?

ニカさんは、ステージでの動き自体がスキャットだった。なんていうのかな、口から発するだけじゃなくて、身体中からあふれ出てる。そのすべてがスキャットなんですよ。

── 普段のライヴを見ていても、ニカさんは全身が楽器なんだなって印象を受けるんですが、ジェントルとの共演でのはじけっぷりをみると、その印象はより強く感じます。

バンドの音に身を委ねてるとね、なんだか音の数があればあるだけ、楽器ごとに身体中の関節が割り当てられて勝手に反応しちゃう(笑)。私自身もサービス精神として踊ってるんじゃなくて、舞台上にいるけどいちリスナーとして音の中にいる喜びをものすごく感じてる。それに、ジェントルと共演してみてあらためて気付いたのは、自分もバンドの音のひとつになりたいってずっと思ってたってこと。
とくに昔、歌詞とかを重視していなかった時代──そっちのほうが自分にとってのスタートなんですけど──ヴォーカリゼーションというか、楽器になりたかったんだよなっていうところに、ようやく立ち返れた。それも、実際にライヴをやってみて気付いたことなんですけどね。キネマでのライヴをイメトレしてた時は、歌手然として立ち振る舞うことを考えてたけど、やってみたらそんなの全然できなくて(笑)。それよりも、自分も音のひとつになれることを全身で喜ぶ感じのほうが勝ってた。

僕らもニカさんを歌手って感じでは接してないんです。もちろんセンターに立って歌は歌っているけど、それ以上にひとつの「ニカさんセクション」みたいな印象で、バンドとしてすべてをぶつけてる。もう総力戦ですよ(笑)。

── たしかにビッグバンドのような大人数で大音量の迫力と太刀打ちできる存在って、選ばれた人にしかできないことなんだろうなって思うんですよね。

本当にその通りで。ビッグバンドで歌う人にもいろんな接し方というか、迎え入れ方があると思うんだけど、こっちがすべてをぶつけても、ニカさんはそれに堂々と太刀打ち出来る。なんかね、両手を広げて「来いっ!」って感じで気持ちいいんです。

やってる曲はそれまでもずっと歌ってた曲ばかりだけど、やっぱり向き合い方が全然違う。お客さんを前にしてるし、ショーっぽくやってるんだけど、今までやってきたどの編成より自分の内側に向いてる。舞台の上でセッションしてる感覚がすごく強いんです。こちらから丁寧にプレゼンして魅せるというよりは、音楽をめっちゃ楽しんでる私たちを見て! この感じ伝わるよね?って。だからリハやってる時から、このステージではMCいらないなって思ったんですよ。そのままを観て聴いてくれたら、お客さんは絶対満足してくれる! 音楽だけで全部伝わるわっていう誇らしさも感じるんです。

── たしかに、二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Bandのステージは、ショーやエンタテインメントとしての魅力もあるんだけど、その括りでは片付けられない熱量を感じるんです……それってもしかすると、スポーツを観戦してるような感覚に近いのかもしれない。

あははは。でも、そうかもしれない!競い合ってるわけじゃないけど、全力を出し合って、ぶつけ合ってる。それを観戦してもらってる感じに近いかもね。

ビッグバンドって、たとえば小さい音を出そうと思ったら全力で小さい音を出す、大きい音を出す時も全力で大きい音を出す。何かをやろうと思ったら、全力でそれをやらなきゃいけない。ウチのメンバーはジャズ畑のミュージシャンが多いから、ニカさんのことを詳しく知らない人も多かったんだけど、みんなで最初に音を出した時の「この人、何者!?」って感じからはじまり、今では「早く次のライヴやりたい! ニカさんに会いたい!」ってぐらい、メンバーみんなの気持ちの膨らみ方がすごい(笑)。彼らがこんなにが前のめりになってるのなんて、初めてのことですよ!

ホント、いい気分でやらせてもらってます(笑)。

── では、ここからアルバム収録曲について訊いていければと思います。まずアルバムのオープニングを飾る新曲「Nica's Band」。ニカさんの「楽器になりたい」欲が存分に発揮された1曲です。

ニカさんのそういう部分に、完全にスポットを当てた曲ですね。ニカさんってバラードの良さこそが真骨頂みたいなイメージがあるじゃないですか? それにニカさんの曲は歌詞も素敵だし、すごく沁みてくる。だけど、心に沁みるような要素は一切省いた、ドンパチお祭りやってるような曲を1曲あったら面白いだろうなって。この曲は「もしもキャブ・キャロウェイがニカさんだったら?」ってことしか考えてない。ニカさんがステージでどうするか、僕がメンバーをどう立ち振舞わせるか、ライヴを想像して作っていったような曲ですね。

私にとっても、歌詞の内容をあまり重視してなかった頃の感覚が凝縮されてるし、曲の中でも声色をあれこれ使わせてもらえる。自由に声色を使い分けても、それを受け入れてもらえるだけの演奏のパンチ力もあるし、楽曲自体もバリエーションに富んだ構成になってて。それが3分ぐらいにまとまってるって、なんてよく出来た曲だろうと(笑)。まさにこの1曲にアルバムのすべてが集約されていると言っていいぐらい。

── 「Nica's Band」から「いてもたってもいられないわ」の流れで通じるのは、笠置シヅ子からの影響ですよね。以前からそうですが、ニカさんは楽曲やサウンドによって、自然と何かが憑依したような歌い方になりますね。

「いてもたってもいられないわ」は一度試しに振り切って笠置シヅ子のつもりで歌ってみようと(笑)。このテイクは自分としてはちょっとやりすぎたかなって思ったんだけど、歌も「せーの!」で録音してて、それがOKになっちゃった(笑)。この曲単体で聴くと声質があまりにも他と違うからどうかなって思ったけど、「Nica's Band」と続けて聴いたら全然違和感なくて。

これは張替君(張替啓太/トロンボーン)が編曲してるんだけど、「Sister Sadie」(ホレス・シルヴァー)のリフに似たようなのをワザと入れてみたりと、王道ビッグバンド寄りなアレンジになってますね。

みんなで最初に合わせた時に、たしかこの曲を一番にやったような記憶がある。イントロでぱーんと音出てきた瞬間、「キターーー!ビッグバンド!」って感動したの覚えてます(笑)。

── この冒頭2曲で二階堂和美 with Gentle Forest Jazz Bandのコンセプトをバッチリ伝えてますよね。そして3曲目は「私の宝」。カリプソ調のアレンジになっています。

原曲をレコーディングした時(『ジブリと私とかぐや姫』 に収録)は、ちあきなおみさんの「四つのお願い」をイメージしてASA-CHANGにドラムを入れてもらったんだけど、これをジェントルでアレンジしてもらう時は、いろいろ悩みましたね。

ジェントルは基本的に4ビートかカリプソのリズムしかやらないって決めてるんです。

── そんな縛りがあったんですか!?

歌謡曲のズンドコしたリズムをやっちゃうと、ジェントルの感じじゃなくなっちゃうじゃないですか。だから、基本は4ビート。ちょっと楽しい時にはカリプソで(笑)。

あはははは。この曲は基本的には子守歌なんで、南国ムードのほうが合うし、いい具合に落としどころが見つかった感じですよね。

── 4曲目は「とつとつアイラヴユー」

ライヴの1曲目はこれにしようって選曲したんですよね。カウント・ベイシー「Moten Swing」や「All Of Me」みたいに、ピアノでポロンポロンってしっとりはじまってからビッグバンドの迫力ある音がダーン出てくる、この戦法でしょ?って(笑)。リハのときから、早くライヴでやりたい! みんなをびっくりさせたい!って言ってましたね。

私はミュージカルとかの、歌だけで歌い始めたらビッグバンドがパーンとついてくる、みたいなのをイメージしました。PAのオトキちゃんにも、「『リトル・ヴォイス』みたいなのが見てみたい」っていわれて、10数年前に見たその映画の1シーンを思い出したりもしました。一人の女の子の妄想がどんどん膨らんでいくっていうストーリーとアレンジがすごくマッチしてて。膨らんだりしぼんだりしながら、基本的にはウキウキしたムードがキープされてるすごく絶妙なアレンジ。『にじみ』に収録のオリジナルは、“とつとつ”感を重視したけど、ジェントルのは、よりおてんばでチャーミングに仕上がってて、すごく気に入ってます。

編曲担当した村上基っていうのが、また一筋縄ではいかないアレンジをするんです。後半にバンドだけテンポが倍になるんですけど、これがかなり難しくて。ニカさんは普通に歌い続けるまま、テンポは倍で取っておかないと合わなくなっちゃう。クセのあるアレンジだけど、それが逆に面白いんですよね。

── クセのあるアレンジといえば、続く「Push Down」もいろんな音が飛び出てくる楽しいサウンドになってますね。

オリジナルを録った時に(頭の中で鳴ってる音は)たぶんこんな感じってコーラス重ねたり、おもちゃっぽい音やホーンを入れてみたりして手探りで作ったものが、このバンドで演奏することで本来思いついた形に近づけた感じがしますね。

もうちょっと遊びの音を入れようかとも言ってたけど、結局はバンドにある楽器のそのままの音で通した。

そう、生バンドの音そのまま。ギミックを一切せずに、これを成立させることが出来たのは潔さがありましたね。

── 6曲目は、幅広い世代に人気の高い「女はつらいよ」ですが、先ほどおっしゃっていた「4ビートかカリプソか」というのには当てはまらないアレンジで。

これが唯一歌謡曲っぽいというか、バックバンドに近い感じでやってる曲かな。ただ、完全に歌伴って感じのハチロクのリズムになりすぎちゃうと普通になっちゃうから、吹き方やニュアンスを微妙にジャズ寄りにしたり、細かいフレーズを意識して演奏しましたね。

この曲は、オリジナルの♪チャラ~ンっていうイントロに親しみを持ってくれてる人がたくさんいると思うんですね。だけど、当初のアレンジはそのイントロはなくなってた。もちろん私も「原曲にとらわれずに好きにアレンジして」って頼んでいたので、それで良かったんだけど、キネマの時に、お客さんも歌がはじまるまで何の曲かわからなかったみたいな、ちょっととまどわせてしまったような気配を感じたんです。私の勘違いかもしれないけど。やっぱり、あのイントロがはじまった時に「よっ、待ってました!」ってなる感じがこの曲には必要って思ったので、あたまにそれを付けてもらった。結果的にちょっと長くなってしまったけれど、それがあることによって、ジェントルによる本来のイントロがはじまった瞬間、ビッグバンドで生まれ変わったアレンジが際立ったと思います。力強く、ぶ厚いジェントルの演奏で、かえって歌が抜けて聞こえるのは不思議ですよね。

── そして7曲目「伝える花」は、ピアノとトロンボーンをメインにした、しっとりとした曲調となりました。

ビッグバンドだから全部使えばいいっていうんじゃなくて、引き算の考え方でトロンボーンとピアノだけでアレンジして。ピアノの別所(和洋)が編曲担当してるんですけど、これすっごいアレンジが難しいんですよ。でも、本当にぴったりハマって。アルバム全体を俯瞰して見ると、この曲が相当スパイスになってる。

私は、この曲を候補には入れてたけど、必須ではないかなと考えていて。だけど、ジェントルのほうからこれは入れたいって言ってくれて。この曲がラインナップに入ったことによって、私の歌だけじゃなくて、ビッグバンドの演奏の幅もすごく感じられるし、この曲によくぞ取り組んでくれたなってありがたく思ってます。

── しみじみと聴かせる「伝える花」からの、明るい「いつのまにやら現在でした」に続く振り幅も楽しいですね。

この曲も「女はつらいよ」と一緒で、何気に一番難しいのがハチロクのリズムなんですよね。これってすごく制圧力があるというか(笑)。4ビートだとメロディがハマらないし、ハチロクになりすぎると演歌っぽくなりすぎちゃうんですよね。そこを崩すようにビッグバンド・ジャズっぽく吹き分けてる。意外とこういうのが一番難しいんです。だから「女はつらいよ」と「いつにまにやら~」はリハーサルでかなり試行錯誤しましたね。

NGワードじゃないけど、ジェントルの中でも踏んではいけない領域があるんだね(笑)。原曲の音頭みたいなリズムって、実は後から形成されたもので。自分の中では最初作った時は、ベースのウォーキングする感じも含めて、これはジャズだって思ってたんです(笑)。今回ジェントルのアレンジで、結果的にジャズっぽくはないにせよ、洋風の仕上がりにしてもらえて嬉しかったですね。歌謡曲っぽい部分とのすれすれな感じが楽しい。あと、私はコーラスワークが気に入っていて。最初の♪ドゥルールルーってところが、すごく気持ちいいの。私からは考え付かなかったアイディアだけど、Gentle Forest Sistersのコーラスがばっちりハマりましたね。

── コーラスワークについて話が出たところで、Gentle Forest Sistersについてニカさんからの印象を訊ければと思うんですが。

今までライヴでコーラスを入れるってやったことがなかったので、素晴らしく贅沢なことですよね。自分も彼女たちがいることで、正確な音程を出すことに努めるし。へんにニュアンスを出すんじゃなく、ハーモニーのひとつとして素直に歌える面もあって。それに3人とも背がちっちゃくって、その存在感のかわいさ! これぞ女性っていう色っぽさもあって。私はわけのわからないセクションなんだけど、彼女たちが女性シンガー然としてポジションを確立してくれて、ステージ上ですごく大事な華を担ってくれている。私はなんていうかほら、華じゃないなにかなので(笑)。彼女たちの存在があるから、自分が野性のほうに振り切れたのかも。

── 自然とそのバランスは取れてる感じはありますね。

シスターズはヴォーカルの先生をしてたりして、めちゃくちゃスキャットも上手くて、私のはメチャクチャだなって、今回すごく思い知らされましたね。でも「ニカさんはそれでいいんですよ! 下手に勉強とかしないでください」って20代の彼女たちに言われたりしてね(笑)。それからスキャットするのが少し恥ずかしくなっちゃったりもしてますけど、久保田くんが言うように、身体全体がスキャットっていうのはそういうことなのかって、なんとなく理解できた部分もありました。キャブ・キャロウェイって言われたのは、すごい目から鱗でした。あ、わたしの存在そこだったのかって。おっさんだったかー!でもそれ聞かされたの、つい最近、アルバムできた後です。

── そして終盤のハイライトのひとつと言えるのが、9曲目の「Lovers Rock」。

近年はこの曲をあまりライヴでやってなかったんだけど、彼らとやるんだったら絶対ハマりそうだなって思って。ジェントルとだからこそ、この曲にもう一度ちゃんと向き合えた感じがします。自分の中で最初にイメージしてたものが、ようやく完成形が見えたというか。リハで初めてやった時に「これが正解だったのか!」って一番感じた曲でしたね。これだけの人数が必要だったんだ!って思ったし、オーケストラでもなく、ビッグバンドでバラードやるのが色っぽいじゃないですか。オリジナルのレコーディングでSAKEROCKにアレンジしてもらった時に、なんか斬新!って思ったんです。自分の中でイメージしてたものと違ったけど、それはそれであのアルバムにはぴったりだったと思うし。だけど、自分が最初に思い描いていたのは、もっとオーソドックスな雰囲気だったんですよね。

たしかに、SAKEROCKのほうがアレンジ感があるというか、僕らがやったほうが原形に戻ったような印象はありますよね。

── ジェントルのアレンジによる「Lovers Rock」を聴いて、ガーシュインとかバカラックみたいな、永遠のスタンダードになりえるような曲だなってあらためて思いました。

「Lovers Rock」がこうして形を変えて生き残ったのは俺はすごく嬉しかったですね。なかなか最近、ニカさんがこの曲やってくれなかったんで(笑)。

みんな好きなんだなぁこの曲ってぐらいに思ってた(笑)。自分にとっては過去の曲で、現在進行形ではないから。でもジェントルのおかげで客観的に接することができるようになって。この曲も喜んでると思います。彼らとでなければ、この完成形は見えなかったですしね。昭和歌謡みたいな括りでもなく、スタンダードのポップスのような、ね。

ひとつ付け加えておくと、「Lovers Rock」と「いてもたってのいられないわ」のトロンボーン・ソロは、オリジナルでハマケン(浜野謙太)が演奏したフレーズを活かしたものにしています(笑)。

そうそう、あえて活かしてるの、いいなと思いました。もともとジェントルと私を結びつけてくれたのがハマケンだからね。彼がジェントルのメンバーでいてくれたことが、そもそもの出会いだから。敬意をそんな形で表せて私も嬉しいです。

── 10曲目「お別れの時」は、原曲のサンバのアレンジがスウィングになりました。

これはファスト・テンポのジャズがぴったりハマるって想像つきやすかったですね。バックの演奏はすごくスピード感があるんだけど、ニカさんはゆったりとした歌で。

私もサンバから離れてほしいと思ったし、当然そうなると思ってました。この曲にあのリズムを当ててくれた段階で、自分の中では、冒頭に話したエラ・フィッツジェラルドの『Ella In Berlin』の最後に入ってる「How High The Moon」だ!と思いました。チーチキ、チーチキっていう刻みの上で、やった!スウィングできる!って。二階堂和美withGFJBは大正解だった!って確信しました。基くんのアレンジも、そこまで盛る?ってぐらいにいろいろ詰め込んでて。途中でジャングルっぽくになるところとか、どんどんひねりを加えてくるんですよね。

── 原曲はサンバっぽいアレンジや歌詞の内容からか極楽浄土なイメージを想像するんですけど、今回のアレンジで聞くとまた違う印象を受けるんですよね。

そうなんですよね。まさにフィナーレを意識した超大作なのに、重くなく、さらりとしてる。全員がスウィングしまくって疾走するから、小気味いいんでしょうね。マサナオくんのドラムもすごくいいんですよね。私、ドラムに対しては警戒心があって、よほどいいドラムじゃないと、邪魔でしかないんですよ。そんなドラムの概念が変わりました。

── 「お別れの時」から新曲「いとしい気持ち」の流れもまた素晴らしくて。「いとしい気持ち」のイントロは、「お別れの時」のフレーズを引用しているんですよね。

図らずも似ちゃったんですけど(笑)、基くんのアイデアでこの流れを作ってみたら、すごくしっくりきて。パーンと華やかにお別れをした後に、もう一度想いを嚙みしめるような感じになりましたね。

── この曲は、どんな想いを込めて作られたんですか?

ジェントルのみんなとリハをするために、月に何回か東京まで行き来してたんですけど、この曲は岩国錦帯橋空港と自宅の間を車で走る15分ぐらいの道のりで思い浮かんだ曲で。家族と離れて、東京にいるジェントルとの夢のような至福の時間を過ごして。それが終わって「あぁ、楽しかった~」って思いながら、現実の生活へと戻っていく……音楽に身をゆだねる贅沢なひとときに対する心残りと、家で待つ娘や家族へのいとおしさのせめぎ合いっていうか。空港に向かったり帰ったりする15分間に気持ちを切り替えていく中で、いろいろ考えるんです。音楽に陶酔できる喜びと引き替えに、3歳のいちばん可愛い時期の、かけがえもない時間をみすみす見逃して、家族に留守を頼みながら出かけていって、いったい何をしてるんだろうって。でも、私自身も着々と年をとっていってるし、10年後ではやれない。誰にも容赦なく時間が過ぎていくんです。もうそれを思ったら何もかもがいとおしくて、苦しいくらい。でも、その瞬間瞬間を味わえることはなんて幸せなんだろうって思うんです。まあ歌詞にあるように「時々嫌にもなるけど 放り出したくなる時も多々あるけど」ね(笑)。

── 来週23日からニカさんの地元広島も含むワンマンツアーも控えてます。

まだまだ課題はありますから、楽しみですよ!「いのちの記憶」もアレンジ練り直してますしね。

アルバムを録音したことで、客観的に曲に向き合えるっていうのもあるし、ライヴの本数をこなしていくごとにバンドも本当]に成熟してきたんですよ。キネマの時はやっぱり、初動の初々しさや喜びは独特のものがあったけど、ステージを重ねていくことによって、演奏にも余裕が出てきてますよね。とはいえ、いまだにみんなと飲みに行くとか、こんだけライヴやっても打ち上げしたのって1回だけだもんね。本当にこの瞬間だけの付き合いみたいな感じなんだけど、それがすごく濃密なんです。この22人の喜びが爆発したエネルギーを、生で一緒に体験してほしいです。とくに広島とか岡山とかは、そうそうこの人数で動けるものじゃないから、この機会をどうか見逃さないでほしい。あれこれやりくりして足を運んでもらうだけの労力に、ちゃんとお返しできるものがあると思います!


11月23日の名古屋緑区文化小劇場からはじまる‘’GOTTA-NI’'のワンマンツアーは
是非ともご参加ください!広島公演などはチケット残り僅かとなっております
ので、お急ぎください。

そして1月22日に東京キネマ倶楽部での新春ワンマンライブも決定!
東京近郊のライブは横浜開港記念館がソールドアウトのため、是非
こちらの東京キネマ倶楽部に足を運んでもらえたらと思います。
詳しくはこちらをご確認お願いします。