──えんちゃんは片想いのセカンド・アルバム作りますよという話が出たとき、どう思いました？

遠藤　いやー、「やる気を出したな」とは思いましたけど、結構急な話だったんで。曲も昔の曲をもっと入れてもいいし、新曲はもっと少なくてもいいんじゃないかなとも思ってましたけど。

──アルバムを作るという話になった時点では、まだできてない新曲もあったわけだし。

遠藤　最初に曲目リストが出てきた時点で、「Party Kills Me!（パーティーに殺される）」はあったかな。

大河原明子（インタビューに同席）　あれをCDに入れたいから、1月の青山CAYのライヴでsirafuくんが「どうしてもやりたい」って言ってたんだよね。すごいギリギリで作り上げてた。

遠藤　あの当日に超力技で完成させた感じでした。そんな状態からレコーディングも始まった感じでしたね。

──今回は、他の曲もスタジオの中で結構できていったと聞いてます。

遠藤　新曲では半々くらいそういう作業だったかも。デモで完成形はある程度あったんですけど、完成させるまでにみんなの意見がバランスよく曲に出たかな。あだちくんが変なフックみたいなのを入れてきたら、伴瀬さんが「こうしたらいいんじゃない？」みたいな。そこの2人が核の部分を結構作ってました。

──えんちゃんもブラスのアンサンブル作りに関わったりとか？

遠藤　そうでもないですね。昔の曲ではわたしが作ったアレンジもありますけど、今回に関してはsirafuくんがやってました。細かいところでは「ここはこうしたら?」みたいな提案したりいろいろやってるんですけど、今回は譜面を書いたりまではしてない。

──つなぎ目をちゃんとするみたいな作業？

遠藤　今の片想いの曲の作り方が、わりとみんながパーツごとに作ってくる感じがあるので、それをただつなぎ合わせて曲にすると流れとしては不自然なんです。だから、そこをどうスムーズにするか、みたいな、全体の流れ的なところを意識して演奏しました。

──逆に言うと、今の感じではそれが一番大事な作業なのでは？　そこがちゃんとしてないとばらばらになっちゃうから。

遠藤　結構勢いで乗り切ろうとしてるから（笑）

──でも、結果的に新曲がよくできてて、よかったと思ってます。なにしろ、曲目をもらったときに一曲目の「片想インダDISCO」がライヴで聴いたこともない新曲だったことが一番不安だったし。

遠藤　あれは賭けでしたよね。

──それがあれだけかっこよくて笑えて踊れる曲として成立した。そういう曲をつなげて続けさせる部分に、やっぱりえんちゃんや伴瀬くん、あだちくんたちの力が作用してるんじゃないかなと思うんです。

遠藤　「片想インダDISCO」に関しては、わたしはぜんぜんわかんないです（笑）

──逆に言うと、えんちゃん的に今回一番印象に残った曲は？

遠藤　そう言われると……、やっぱり、「VIVA! Milagro」かな（笑）。ありえない感じの展開だし、音楽で遊んでる曲ですよね。純粋に音楽としておもしろい曲にしようとして、本当にそうなった。そういう曲だったかな。レコーディングでも一番大変だったし。

──あだちくんはアレンジをライヴ用に変えたらできるんじゃないかって言ってましたけど。

遠藤　わたしは“できない派”に一票かな（笑）

──そういう意味では、片想いは今まではライヴで繰り返してきてレコーディングするというパターンがほとんどだったから、今回の曲作りは初めてだったんじゃない？

遠藤　まともなアーティストみたいなことをやりましたね（笑）

大河原　普通はそうなの？

遠藤　普通は締め切りがあって、曲を作るというのがあるからね。だから、片想いも成長したんじゃないの？（笑）

──まあ、いいセカンド・アルバムができたから、サードも4枚目もできると思います。昔の曲もまだいっぱいあるしね。

遠藤　いっぱいありますよ。

大河原　昔の曲も、もっと録りたいなー。

──「ハピネス」とかも候補にあったって話ですけど。まだ録ってない曲で、これをやりたいというのは2人はあります？

大河原　まあ、「ハピネス」はやりたいですね。昔はすごくやってた曲なので。

遠藤　「ネコトラロック」ですね。

大河原　そうなんだ（笑）

遠藤　ああいうアホな曲というか、まじめなんだけどかわいい曲がほしいです。

大河原　あれは井手（リョウ）さんとsirafuくんで一緒に作った曲だったと思う。

遠藤　「パンクロッカー」も入ってよかったかも。

大河原　だいたい期待を裏切るんだよ、片想いは（笑）。「パンクロッカー」は、えんちゃんが入ったときの印象が強いかな。3管になった感動があった（笑）。わたしはえんちゃんと一緒に録ると安心できるんですよ。えんちゃんの音を聴きながらホルンを吹くと、すごく吹きやすいんですよ。

──いや、本当にえんちゃん、大ちゃんがすごく自然に一緒のバンドにいるというのが奇跡的にすごいことですよ。

遠藤　本当に多様性を認めてるバンドだと思うんですよ。

大河原　本当にそうですね。わたしが鹿児島に行くって言ったときも許してくれたし。

──2014年に大ちゃんが一時期鹿児島に住むという決断をしたときも、片想いは脱退しないで、自分のペースで参加できるときに続けるという選択をしたし、それができた。

大河原　そうですね。片想いだからできたという気はします。

遠藤　まあ、何回か解散の危機はありましたからね（笑）

大河原　いろんなメンバーチェンジをわたしも見てきてるので。

──まあ、中心の3人が片想いをやめるって気になってないのが大きい。

大河原　聞いたことないよね。

遠藤　ない。そういう人たちではないからね。なにか「表現をしたい」ということではなく、ライフワークというか、人生を楽しもうとしてることが片想いになってるから、なくすには惜しいという感じなんですよね。

──それは大ちゃんにとっても、えんちゃんにとっても？

遠藤　わたしにも、あったほうがいいですか？（笑）

大河原　えんちゃん、片想いにいてね（笑）

遠藤　一番いなくなる可能性があるのは、わたしなんで。今でも片想いになじんでるわけでもないんですよ。でも「いてもいいよ」という感じがあるから、いる。

──でも、そう言いながらも、えんちゃん、もう片想いで何年？

遠藤　いや、もうやめるか続けるかで何回転かしたんですよ。何回転かして、片想いに着地したのかな。結構、イッシーに相談したこともあったけど。そしたらイッシーは「えんちゃん、やめないで！」って、あの声で（笑）。まあ、相談したのがイッシーって時点で相談する相手を間違えてるんだけど（笑）