松下
高橋 10周年!
松下 来年で10年ってことは、意外に俺ら、若手ではないよね。
高橋 10年でCD3枚。まずまずなのかな。
松下 10年間ずっと週1、2のペースでみんな会って、だんだん倫理観がおかしくなってきてる。
高橋 いや、おかしくなってないでしょ?
松下 だって、同世代くらいの普通の人からしたら、めっちゃ幼稚だと思う(笑)。たぶん、俺らの会話をはたから見たら「何言ってるんだろう?」みたいな感じだよね。
高橋 打ち上げでもだんだん俺らの卓から人が減ってく。外部の人から見たらぜんぜんおもしろくないことで笑ってるしね。「シコシコシコシコ」みたいな(笑)。
──何それ!(笑)
高橋 (宮本)直明さんが最近導入したストライモンのロータリー・シュミレーターのスピード説明を「シコシコ」で再現する、みたいな。
松下 それをリハ中にみんなで爆笑して。
高橋 さらに打ち上げでも話して笑ってるんだけど、他の誰にも伝わらない。ただ「きもちわる!」って思われるだけ(笑)。こないだ伊勢にライヴで行くときも、ハイエースの中でずーっとしりとりしてたし。必ず斎藤(録音)くんを経由するしりとり(笑)
──10年近く一緒にいると、誰かと誰かがケンカしたり、険悪になったりはないんですか?
高橋 ほとんどないですね。
松下 まあ、ケンカはいくらでもあるんですよ。でも長い間気まずくなる、みたいなのはないですね。せいぜい何かあったとしても、次の週にスタジオ行くのが恥ずかしい、くらいで(笑)
高橋 あんまり音楽絡みはないよね。たとえば、増田(薫)の直明さんイジリがちょっと失礼だったので、「おまえ、いいかげんにせえや!」ってなる、みたいな、そういうのが多い(笑)
──大学から一緒とはいえ、じつはメンバー間には微妙な年齢や学年の差があって、そこが絶妙にバランサーというか緩衝材になってるのかも。
高橋 逆に、全員タメのほうがケンカになりやすいのかな。俺らは年上でも後輩感がある人もいるし。
松下 長岡も10年一緒にいるけど、「マコイチさん」とかみたいに年上には敬語だもんね。
──むしろ源ちゃんは後輩なのに何故、みんなにタメ口なの?(笑)
松下 なんか、俺は縦社会みたいなのが苦手なんですよ。
高橋 でもさ、高校は全寮制の学校で、ラグビー部だったんだから、むしろガチガチの縦社会だったんじゃないの?
松下 そういえばそうだね。ガチガチの体育会系だったんだけど、人との距離の取り方が違ったかな。
高橋 でも源ちゃんのタメ口は、後輩としてのキャラを確立した上でのタメ口みたいなノリがある。ヤンキーの「なんとかっしょ」みたいなさ。長岡くんがいきなりタメ口で話すと、「どうした?」みたいな感じになる(笑)。あ、でも、長岡くんは斎藤くんにはタメ口だよね。歳は斎藤くんが上だけど、学年が一緒だから、芸人とおなじシステムなのかも。あと、先輩だけど直明さんにもタメ口だよね(笑)
松下 自分の中にランクがあるでしょ? 「こいつは下だな」みたいな(笑)
長岡 いやいやいやいや(笑)
高橋 それも芸人システムでしょ。有吉が上島竜兵にタメ口で話すみたいな、仲がいい前提のツッコミ的な。
──でも、つくづく奇跡的なバランスで成り立ってる関係性ですよね。
松下 あ、軽くまとめた(笑)
──そして今回、結成時のメンバーだった山入端(祥太)くんが復帰して8人になったというか、オリジナルのかたちに戻って、その体制での初リリースとなったのがEP『楽しく暮らそう』なわけです。その8人の関係性から生まれたとも言える「楽しく暮らそう」感を、今回はマコイチくんをホストとしてリレー・インタビューであぶり出していこうと思ってるんですが、最初が源ちゃんと長岡くんの同級生同士。2人はもともと一緒にバンドもやってたという関係性もあって興味深いです。でも、さしあたって長岡くんの話題でいうと、今回のEPに入ってる「僕らのソウルミュージック」ですかね。これって長岡くんが持ってきた曲だそうですけど。
高橋 仮タイトルがずっと「長岡のいい曲」だったんですよ。珍しく、まるっとコード進行を持ってきて。
松下 職人気質が結構あるんですよ。ソングライティング的なこともできるし、ギターも一番うまい。思い出野郎ではベースだけど(笑)
──思い出野郎は歌詞はマコイチくんが書くけど、曲は全員で作曲というか、「あの曲のこのリフがいい」とか、そういうことをスタジオで言い合いながらサンプリング的に作っていくものが多い、って話をよく聞きますけど、「僕らのソウルミュージック」の場合は、そのベーシックにあたる部分を長岡くんが持ち込んだわけですね。
長岡 たまたま思いついたので。別に特別に変わった進行でもない、王道のいい曲風だったんですよ。それで「長岡のいい曲」っていう呼び方になったと思うんです。
高橋 でも、そういう王道みたいなのって、参照する元ネタがあると逆に作れないんですよ。参照元が大ネタだとコード進行とかで意外と自由にやれなかったりする。「あまりにそのままだからやめよう」ってなって落としどころを探すのに苦労した、みたいなことも前にあったし。「僕らのソウルミュージック」では、そういう王道感を踏まえたオリジナルを長岡が持ってきてくれたことで、今までやれなかったことをやれたというか、ゼロから作ったオリジナルだからこそ、進行自体は「あるある」でもちゃんと曲としていいじゃんと思えるところまで行けた。今後はそういうところに行きたいですね。
──長岡くんは、曲作りへの興味は今までもあったんですか?
長岡 自分ではぜんぜん作ってないんですよ。進行を考えたりはするんですけど、なかなかかたちにはならなくて。
高橋 他のメンバーはネタを持ってくるときには、「いまこういうのが好きっす」みたいな感じで、全体のコンセプトとか関係なかったりするんですけど、長岡は結構、俺らが話してることを汲んで、「いまやりたいのはこういうことっすかね」みたいな感じで持ってくるタイプなのかな。プロデューサー気質とかじゃないですけど、バンドのいまのモードを一番意識してくれてるかな。
長岡 そう言われると、めっちゃうれしいです。
松下 meiちゃん(mei ehara)のバンドでも最近アレンジやってるんでしょ?
高橋 あっちはどういう感じなの?
長岡 もともとアルバムがキセルのプロデュース(辻村豪文プロデュースで、キセルが演奏担当)で、アレンジが完全にかたちになっていたから、再現は難しいし、崩しつつどう3ピースに落とし込むかでしたね。
松下 俺らのアレンジもやってくれよ(笑)
──meiちゃんのバンドでライヴするときに、長岡くんがコーラスしてるのを見て「歌えるじゃん」って判明したので、今回のEPでもコーラスしたという流れもあったんでしょ?
高橋 昔から「長岡歌える説」はあったんですよ。
長岡 前は、弾きながらは歌えなかったんですよ。でも、meiちゃんのサポートやるんで練習してたら、ちょっとできるようになってきて。
高橋 それ、前から練習してくれよ(笑)。あと、レコーディングの日の朝にスタジオで、meiちゃん、増田、斎藤くんと長岡くんでカラオケ行ったときの動画を見せてもらったら、猿岩石の曲を長岡くんが熱唱してて(笑)。「めちゃくちゃ歌えるじゃん」ってわかったので、その日にコーラスやってもらいました。
──そう言えば、源ちゃんと長岡くんが昔やっていたバンドの話って、ちゃんと聞いたことなかった気がします。
松下 ホンネーズってパンク・バンドでした。長岡くんの前の彼女がヴォーカルで、僕がドラムで、長岡くんがベースで、もうひとりギターがいて。
高橋 Wool & The PantsのMV作ってる人がギターでしたね。
松下 でも、あのバンドでも、ほぼ長岡が曲を作ってたよね。
長岡 あれはね、確かにそう。
松下 鳴かず飛ばずでやめたよね。客は5人くらいだったし。
長岡 一番最初に「辞める」って言ったじゃん(笑)
高橋 思い出野郎の初期は、ホンネーズもよくやってたよね。多摩美でゲリラ・ライヴとかやってる映像をYouTubeで見たな。ライヴやってる横でオオヤ(イラストレーターのオオヤヨシツグ)くんがパンツ一丁で体にペイントして魚さばいてた(笑)
──アイタタタタ(笑)。でも、そこから「僕らのソウルミュージック」であり、EP『楽しく暮らそう』までたどり着いたというのも感慨深いものがありますね。
松下 この数年で、紆余曲折もありましたよね。今回の『楽しく暮らそう』は、特に「みんなで作った」感があるんですよ。初めてくらいかも。みんなのアイデアの断片をちりばめて、マコイチくんがそれをまとめて、歌詞をつけていく、みたいな。
高橋 プリプロも結構がっつりやったからね。
松下 ミニ・アルバムだけど、一番思い入れがあるし、自分たちもアップデートされてる。
高橋 納得いくまでやりこむ、ってことが一番できてる気がする。2枚アルバムを作って、やっと無駄な時間が省略できたというか、やり方がわかってきた。
──ファーストではプロデューサーとして頼れるmabanuaさんがいて、セカンドではクリックも積極的に使って細かくパンチインで音を修正もして。そういう意味では、今回は一番、思い出野郎の「らしさ」をそのまま出せてる気がします。
高橋 ライヴ感を持ってベーシックを録るということでしたね。スタジオで鳴らされてる音の一番いい状態がパッケージされてる感はある。昔のソウルのレコードって「せーの」で一緒にやってるじゃないですか。あそこへの憧れ感が今回は前より出せてるかな。
長岡 クリックよりも、ちょっと走ったりしたほうがいいっていう感じでしたね。疾走感があった。
高橋 長岡くんは溜めるタイプのベーシストで、前まではレイドバック気味に弾くというやり方が多かったんですけど、今回はシカゴ・ソウルとかノーザン・ソウルの焦燥感というか、独特の跳ね感が出したいと思って、長岡くんにもベーシックのときに「ドラムよりちょっと前めで弾いてみて」ってお願いしましたね。それで、引っ張るようなスピード感が出た。
──ファンク感というより、そのすこし前のソウル感。それが出てますよね。
高橋 そもそも、俺らをファンク・バンドって言っちゃうと、ちょっと語弊があるような気がするんですよ。今回も頭の2曲はそういう感じだと思います。
松下 いわゆるファンクみたいなのって、やんないもんね。歌ものとしては、ファンクよりちょっと前のソウルをベースにしてたほうが、歌が乗せやすいし。
高橋 Brunswickのソウルとかって、ちょっと演奏が荒いじゃないですか。荒いというか、独特の跳ね感なんですけどね。レア・グルーヴの中でもビート強めのソウル。そういうワイルドさもありながら、結構繊細なグロッケンとかストリングスが入ってるというのも好きなところで。
──話は戻りますけど、来年は10周年。
高橋 でも10年やってきた感はあんまりないですね。結構あっという間だった。ドカーンもないけど、じわじわ上がってきた感じで。そういう流れのなかで、最近周りをにぎわせてるバンドが俺らの前を通り過ぎていったな、って。俺ら、Suchmosがファーストだすちょっと前に対バンしてて、Suchmosの後に俺らだったんですよ。順番逆ですよね(笑)。でも、そういう人たちに対して俺らが下がってるわけじゃなくて、伸び率が違うんですよ。じわじわっと続けてる。それが逆にいいのかもしれない。
──イベントとか、リリースとか、何か考えてるんですか?
高橋 10周年。吉祥寺曼荼羅でイベントやるとか?(笑)
松下 自主企画〈SOUL PICNIC〉第一回(2012年12月30日、吉祥寺曼荼羅)をやったのが曼荼羅なんで。
──そういえば、そこにVIDEOくん(VIDEOTAPEMUSIC)のライヴや、ほとんど面識のなかった髙城(晶平)くんをDJに呼んだりしたのが、いろんなことの始まりでしたね。じゃあ、原点回帰するのか? それとも大きく出るのか?
高橋 それよりも、10周年は2枚組のアルバム作るしかないよ。今までの10年を表現したファンク・オペラ。今、みんな出さないよね、2枚組って。
松下 全部リミックスにすればいいんじゃない?
高橋 最初、オオヤが魚をさばく音から始まる(笑)
──10周年記念で、今まで〈SOUL PICNIC〉をやってきた全会場を1日でめぐるとかやってみたら?
松下 それぞれ、めちゃめちゃ場所は離れてるけどサーキット・イベントに(笑)
──最後に江ノ島OPPA-LAにたどり着くとかにしたら感動的かも。
高橋 そこから朝まで。それはやばい!(笑)
──(笑)はい、ではこのあたりで次の人たちを呼びましょうか。